一人前になるために自分を成長させてくれる修業の場【挽きぐるみ蕎麦屋 禅開】
2022年11月21日公開
8年半働いたガソリンスタンドを後にし、飲食業界へ飛び込んだ中本さん。調理や接客の技術を少しずつ磨いていきます。今年3月から挽きぐるみ蕎麦屋 禅開で働き始め、そばに関するさまざまな知識や調理スキルを習得しようと、日々奮闘中です。
スタッフ/中本貴之さん(35歳)
旭川市出身。ダーツが趣味で週に2、3回通ってリフレッシュしている。お店のお勧めメニューは「天ぷら七品盛蕎麦」。
祖父母の影響でガソリンスタンドから飲食の世界へ
高校卒業後、ガソリンスタンドで働き始めた中本さんは、車の誘導や給油等を通してお客様と関わる中で、接客のノウハウを培っていきます。「粗相のないよう、言葉遣いは非常に気を付けていました。経験や知識のないところから始めましたが、自分の接客や作業に対してお礼を言われることがうれしかったですね」。お客様だけでなく、同僚も含めた人とのつながりや接し方は学びになったと振り返ります。しかし、興味は次第に別の働き方へ。父方の祖父母が営んでいた飲食業と、母方の農業にそれぞれ引かれ、迷った末に飲食の世界へ進む決断をします。
居酒屋に転職した中本さんは焼き物を担当。調理の知識と技術を習得していきます。「焼き上げるための時間やタイミングの判断が難しく、その感覚を身に付けるのが大変でした」。先輩や上司の焼き方を観察してはまね、賄いで練習し、何度も焼いて経験を積むことで感覚をつかみました。その後、居酒屋を渡り歩き飲食業の接客ノウハウを学んだり、高校時代の友人に頼まれて農家の手伝いをしたりと、さまざまな場所や視点から食と関わり知見を広げていきます。そして今年3月、別の友人から紹介されたのが挽きぐるみ蕎麦屋 禅開でした。
お客様の感想から会話を広げていく
また飲食店で働きたいという思いや、これまでにはない刺激が欲しかったことから、未経験のそば屋で新たな挑戦を始めた中本さん。厨房に入って仕込みや調理補助をする時もあれば、ホールで接客や会計をすることもあり、ランチの時間帯はホールでパートスタッフのサポートに徹することが多いそう。他のスタッフの様子を見てレジに入ったり食器を下げてテーブルを拭いたり、連携を取りながら立ち回っています。昼間のにぎわいは居酒屋の夜間帯とはまた違った質の忙しさで、「優先順位を完璧に落とし込めていないせいで効率良く動けないなど、まだまだ課題だらけ」と話します。そんな中本さんは、オーダー時にメニューを間違えないよう気を付けるのはもちろん、その他にもホールで意識していることがあると言います。「料理を召し上がっているお客様の表情を見て、お会計の時に麺の食感や天ぷらの揚げ具合、味付けの感想を聞いたりしています。そこから産地の話など会話が広がって良いコミュニケーションが取れるんです」。お客様からの「おいしかったです」「また来ます」の言葉と笑顔をやりがいに、努力を続けます。
作業スピードと天ぷらの揚げ加減が課題
一方、厨房の中では仕込みや盛り付け、配膳準備、調理補助などを行います。仕込みは開店前やランチ後の落ちついた時間にネギやかき揚げ具材のカットをしたり、とっくりにつゆを入れておくなどさまざま。限られた時間の中で何十人前もの量を用意するため、大変な作業です。また、調理補助の機会はまだ多くはないそうですが、そばをゆでたり天ぷらを揚げることもあると言います。「天ぷらは奇麗に、おいしく仕上げることを心掛けていますが、見極めがとても難しく苦労しています。揚げる時間が十数秒違うだけでもサクサクの衣にならないので、感覚をつかむまで日々勉強ですね」。
同店での挑戦が始まって約8カ月。まだまだ自分の仕事ぶりに自信や手応えは感じられず、やるべきことはたくさんあるのだそう。「そばの知識を深めたり、作業スピードを上げる必要があります。まだそばを打つステップには進めていませんが、成長を続けて一通り作業ができるようになり、お店を任されることが目標です」。強い気持ちでコツコツ経験と試行錯誤を積み重ね、日々一人前に近づいていく中本さんです。
スマートフォンを操作して注文を受ける
つゆをとっくりに入れておくことも仕込みの一部
そばがゆで上がる前に薬味などを盛り付けて準備
考えることが成長につながる
店長/笠井健二さん
当店はひきたて、打ちたて、ゆでたての「3たて」を掲げてそばを提供し、衛生面から機械での製麺を行っています。飲食店は元気と笑顔が大切ですが、成長するために考え続けることも必要です。スタッフには「なぜ」を5回考えて行動するように伝えています。作業を点ではなく前後関係とつなげた線で考えることで、仕事への理解を深めてほしいですね。
挽きぐるみ蕎麦屋 禅開
今年3月にオープンしたそば店。地元生産者から仕入れた玄そばを、店内の石臼でひいて提供している。今月からはオンラインショップも開設。「拉麺 鷹の爪」も手掛ける株式会社一代目が運営。
北海道旭川市豊岡2条8丁目3‐24
TEL.0166-73-3822
https://takanotsu.me/