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縁の巡りで壊す稼業から作る仕事へ【Vegan Ramen めぐり】

2024年8月12日公開

私が選んだ職場

高校卒業後は建設業界に入り、主に家の解体に携わってきた恩田さん。30代半ばで難病を患い、やむなく離職した後に巡り合ったのは「壊す」 稼業とは正反対の、「作る」仕事でした。

店長/恩田典由さん(40歳)
旭川市出身。個人的なお勧めは、スープのおいしさが一番分かりやすいという「塩」。休日は他店を巡り、店づくりやオペレーションの研究に余念がない。

突然訪れた難病のため38歳で離職

恩田さんは体を動かすのが好きだったことから、旭川市内の高校を卒業後、建設業界に足を踏み入れました。「とびや土木など、外仕事ばかりやってきました。解体業が主で、住宅を壊す業務が多かったですね」。

順風満帆な生活を送る中、体に異変を覚えて病院に行ったのは30代の半ばを迎えたころ。診断の結果、医師から告げられたのは思いがけない病名でした。「首のヘルニアくらいに考えていたのですが、『後縦靭帯骨化症』という難病だったんです」。痛みやしびれが上半身を襲い、悪化すれば歩けなくなるケースもあります。その後2度の手術を経て日常生活に支障がない程度には回復したものの、難病だけに完治は難しく、体への負担が大きい解体の仕事はあきらめざるを得なくなりました。

38歳にして、やむなく職を失ってしまった恩田さん。そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、行きつけのバーのオーナーだったと言います。「職がないならうちで働いてみないかと誘ってくれたんです。ここでもいいけど、とりあえず人手が足りない店のほうで、と」。オーナーはバー以外にも飲食店を経営しており、紹介されたのはそのラーメン店「Vegan Ramen めぐり」でした。

未経験の飲食業に全力で挑戦

建設業界しか知らない恩田さんが当店で働き始めたのは昨年9月のこと。飲食店に勤めるのは生まれて初めてで、すべてが新鮮でした。「これまでは壊すのが仕事でしたからね。最初はラーメンを作る予定はなかったのですが、見ているうちに自分でも作ってみたくなりました」。

当時の店長に一から教わりながらラーメン作りを身に付けていった恩田さんは、同時に店づくりにも着手していきます。まずは他店を視察し、店構えやオペレーションについて勉強したそう。「店の清潔感や、どう動けば回転率が上がるかといったことを意識して見ていました。効率良く仕事をするために環境を整える大切さは、前職で嫌というほど学びましたから」。更に、仕込みの仕方などは改善の余地がないか、自分なりの方法を模索。ラーメン作りの修業を重ねながら、作業の効率化を目指していきました。

接客面では、外国人観光客が多い店のため、最初はどう接していいか戸惑うばかりだったと言います。スマートフォンの翻訳機能を使いながら何とかコミュニケーションを図る日々。慣れてきた今では、あえて日本語で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と元気に声を掛けています。

スタッフの信頼を得て店長として成長中

当店は名前のとおり、動物性食材を全く使わない「ビーガンが食べられるラーメン」を提供しています。使用するのは傷みやすい野菜ばかりのため、一度に大量の食材を仕込むわけにはいきません。「合間を見てこまめに仕込みながら、お客様が来たら提供、そして仕込みの繰り返しです」と恩田さん。ラーメン作りもすっかり板に付いてきた中でこの春からは店長となり、今では5人のアルバイトスタッフの管理も任されています。

今年5月からアルバイトをしているスタッフの鴇田(ときた)さんは、「店長は面白くて優しく、仕事については本当に丁寧に教えてくれます。分からないことも聞きやすいのでありがたいですね」と信頼を寄せます。実は、その背景には恩田さんなりの考えがあります。「一度聞いて分かったつもりでいても、忘れてしまうのが人間です。指導では同じ内容を繰り返し伝えて定着させるよう心掛けているんです」。

そんな店長の目標は、もっと店を繁盛させること。「そのために、人手不足を解消してランチをやりたい」と夢を膨らませます。病気を縁に巡り合った仕事は、新しい希望も作ってくれているようです。

  • 手際良くラーメンを作る恩田さん

  • 開店直後は外国人のお客様が圧倒的に多い

  • ラーメン作りの指導にも力が入る

  • 豊富なメニューの中でも異彩を放つ「抹茶ラーメン」

スタッフ一人ひとりのスキルアップを支援したい

代表/松田拓也さん

誰もが気軽に食べられるおいしさを目指してたどりついたのが動物性食材を使わないラーメンでした。ビーガンと言われなければ普通のラーメンと勘違いされるほどうまみが強いんですよ。店のスタッフには、どんなに短い勤務でも賄いでラーメンを食べさせています。お腹が空いてはいい仕事はできませんからね。せっかく来てもらっている以上、各人がスキルアップできるような経験を与えたいと思っています。

Vegan(ビーガン) Ramen めぐり

2022年5月にオープン。ダイエッターや健康を気遣う人も罪悪感なく食べられるラーメンが魅力。早い時間帯は外国人観光客が大半というほどで、Googleのクチコミには英語が多い。

北海道旭川市4条通7丁目586‐2 つつじプラザビル1F
TEL.0166‐22‐2202
Instagram:@vegan_ramen_meguri