お客様に合わせた接客で我が家のようにくつろいでもらう【小料理 WAGAYA】
2023年6月19日公開
人見知りな性格を改善する荒療治としてあえてサービス業界に飛び込んだ坂口さん。接客の楽しさを体感し、多くの経験を積んでいく中、奥様がオープンした小料理屋で働くことになりました。
ホール係/坂口重行さん(44歳)
WAGAYAという店名どおり、お客様には時間を忘れて自分の家にいるように楽しんでもらいたいと「おいしい、楽しい、あずましい」の3つの「しい」をモットーに接客する。
お客様へのあいさつで仕事モードに切り替える
自らの性格を「人見知りで根暗なタイプです」と評する坂口さんは高校卒業後、自分を変えるためにサービス業の道へと進みました。「黙々と何かを作るような仕事だと、ますます引きこもってしまうと思ったんです。お客様の前に出れば暗い顔をしているわけにはいきません。ホテルでの勤務を経て、25歳で夜の繁華街でホール係として働くようになって以来、およそ20年間飲食業界で働いています」。
人見知りではあるものの、クラスメイトなど気心の知れた人に対しては楽しませるのが好きだった坂口さんは、接客の場でも気持ちを仕事モードに切り替えることで対応しているそうです。「今でもそうですが、職場に向かうタイミングではまだ気が重い時もあります。開店の準備をしてお客様と顔を合わせ、『いらっしゃいませ』とあいさつすると完全にスイッチが入りますね」。
お客様が楽しんでいる様子や、再度来店してくれる姿に励まされ、初めて会う人と接していても業務中は苦に思うことがないと言います。
奥様を支えるため夫婦で働くことを選択
現在の職場である「小料理WAGAYA」で働くことになったのは店主である友香さんとの結婚がきっかけでした。「店長がこのお店をオープンさせた当初、私は別の飲食店で働いていました。結婚後、自分の店を始めることも考えましたが、お客様をもてなすために妥協をしない姿を見て、側で支えて一緒にやっていきたいと思ったんです」。
お店での坂口さんの役割は、お客様対応がメイン。既に完成しつつあったお店の雰囲気を壊さないように努め、お客様には積極的に声を掛けているそうです。「出張や旅行など初めてのお客様も多くご来店いただいてます。どんな店なのか、ドキドキしながら扉を開けていると思いますので、席をご案内しつつ『気軽に楽しんでいってください』と一言添えています」。
注文を受ける際には、来店した時間を考慮してお勧めする料理を選択。遅い時間帯にくるお客様は食事を済ませていることが多いので、「食事はお済みですか」と、声を掛けた後に軽いものを勧め、1軒目であればピザ、パスタなどボリュームのあるメニューを紹介します。更に旅行者であれば、函館ならではの食材を使った料理を提案するなど、会話を通じてメニュー選びのお手伝いをしています。
店主をサポートするため本気で料理に挑戦
働き始めてから2年が経ち、ようやくWAGAYAらしさが板について来た気がするという坂口さんは、現在、店主に料理を教わり始めたそうです。「旬の食材を使ったおばんざいの他、グランドメニューがありますので、フライドポテトやナポリタンなど、比較的易しそうなものから教わっています。スタートはウインナーを炒めるところからでした」。
店主の負担が軽減できて効率もアップするだろう、そう思って始めた料理修業ですが、家庭で食べるものと、お客様にお出しする料理とは似て非なるもの。対価をいただく以上、真剣に向き合う必要があると坂口さんは襟を正します。「いずれは5、6種類あるおばんざいのうちの一つでも自分の作ったものを『今日のシゲちゃんの一品』として出せるようになりたいですね。ノリでふざけて作っていると思われないためにも、積極的に経験を積んで腕を磨いていきたいです」。
真面目に取り組んでいることが伝わって初めて、お客様には安心して食べていただけます。飲食業界で長年働いてきたからこそ知る厳しい世界に、あえて取り組んだ新たな試み。その結果の出る日が楽しみです。
エプロンを着て、気持ちを仕事モードに切り替える
看板を出して営業を開始
オーダーされたドリンクを用意する
料理の完成に合わせてサラダを準備
完成したおばんざいをショーケースに並べる
お客様にとっての「良いサービス」を見極める
店主/坂口友香さん
重行さんは年齢や性別を問わず、万人に親しまれる人ですね。私に代わってお客様対応をしてくれるお陰で、料理にもうひと手間加える時間を確保することができました。接客も料理も相手の立場になって考えてみることが重要です。良いサービスと感じることはお客様によって異なるので、早い段階で見極めて提供することが居心地のよさにつながるでしょう。
小料理 WAGAYA
おばんざいを肴にお酒と会話が楽しめるお店として2020年にオープン。朝市で海鮮は堪能したという旅行者や出張中のビジネスマンなど、「お刺身以外でおいしものを食べたい」というお客様でにぎわい、「今夜の〆めし」目当てで来店する常連も多い。
北海道函館市松風町5-12
TEL.0138-86-7008