人一倍強い「食」への探究心でお客様が喜ぶラーメンを生み出す【らーめん 函館 武蔵】
2023年10月23日公開
知人からの依頼で突然ラーメン店を任せられることになった小川さん。未経験という状況の中、食べることに対する興味と、おいしいものを作るという強い意志で、ラーメン好きが通う店へと成長させていきます。
株式会社食の天下人
らーめん 函館 武蔵
代表 小川 博さん(67歳)
おいしいものを求めて札幌にもたびたび足を運ぶ食べ歩き好き。カップラーメンなども参考に、お客様の味の流行を見極めながら新メニューを考案する自称「味の天下人」。
中古車販売業からラーメン屋へ電撃転職
22年前、中古車の販売店を経営していた小川さんは、知人から飲食店の空き店舗を借りたから手伝って欲しいと頼まれました。「何を手伝うのかと聞いたら、ラーメン屋を始めるからそこでラーメンを作ってくれと言うんです。あまりにも唐突で驚きましたね。でも、面白そうだなとも思いました」。
当時はインターネットの普及に伴い、中古車の売買もネット中心へと移る転換期でした。年齢的に対応が難しく、別のことを始めるきっかけを探していたタイミングだったこともあり、この誘いに乗ることを決めました。
ただし、OKはしたものの飲食店で働いた経験はゼロ。そこで、店がオープンするまでのおよそ1カ月間、知人の店でラーメン作りをいちから学びました。「包丁も持ったことのないレベルだったので自分はもちろん、教えるほうも大変だったでしょうね。スープの仕込みから麺のゆで方、盛り付けまで詰め込み式で習いました」。
修業は楽ではありませんでしたが、頑張ったかいもあり1カ月後には予定通りラーメン店をオープン。カウンターで自分の作ったラーメンをおいしそうに食べるお客様を見て感動し、この道でやって行こうと改めて決意しました。
アクシデントを教訓に安全対策を強化
4年後には独立して「らーめん 函館 武蔵」を開店した小川さんは、メニューのレパートリーを増やしながら2号店、更に3号店をオープン。事業を拡大する中で小川さんがこだわったのが、お客様との交流だと言います。「天気の話題でもいいので会話をすればその場が和みますし、お客様との関係が築けていれば失敗した時でも笑顔で帰り、また足を運んでくれます」。
注文や会計の時はこうした関係を作るのに最適な時間なため、同店では券売機をあえて採用していません。新人の従業員が注文を取りに行く際にも「なるべく話をしてきなさい」と教えているそうです。
順調に事業を拡大してきた小川さんでしたが、現在に至るまでには大きな失敗もありました。「チャーシューを圧力釜で炊いていた時、疲れて眠り込んでしまったんです。焦げ臭い匂いに目が覚めてドアを開けると煙で真っ黒。それ以来、仕込みは昼にしか行わないようになりました」。
また、老舗のそば屋を改装して始めた2店舗目では、長年の営業により壁の中が炭化していて、それが原因で火災が発生。こちらの過失はありませんでしたが、この件を教訓に火の扱いには特に慎重になり、スタッフにも注意と火災に対する対策を徹底するようになりました。
商品プロデュースという新たな挑戦へ
この道22年、多くのラーメンを考案してきた小川さんは、新メニューをお客様に気に入ってもらえた時が一番うれしいと感じるそう。今年からは新たな動きもあり、ラーメンづくりは新たなステージに突入しています。「年齢を考えると体力的にこれ以上店を増やすのは無理だけど、頭はまだまだ働きます。今後は商品のプロデュースに力を入れていきたいですね」。
既に函館駅前でリニューアルオープンするラーメン店のプロデュースを進めており、委託してくれた店に恥をかかせるわけにはいかないと、自分の店以上に力を注いでいます。「飲食店を経営する者として、あれほどの一等地で商売ができるのは光栄なこと。失敗は許されません」と、自分を追い込んで取り組む小川さん。旅行で函館に来る人に武蔵プロデュースのラーメンを食べてもらい、その名を全国に広めたいというラーメン道の追求にゴールはありません。
麺のゆで上がりに合わせてスープを準備
お客様に正面を向けて提供する
提供時間を短縮するため2人で作業
時間をかけて一つひとつのメニューをマスターする
店長/鈴木 康さん
代表は好奇心が強く研究熱心で、とても馬力のある人ですね。自分では厳しい性格だと言いますが、とても優しく指導してもらっています。当店では味噌味のラーメンだけでも5種類あり、メニューが多いのが特徴です。調味料の分量はもちろん、同じ材料を使っても炒める順番が異なるなど、すべて覚えるのに長い時間と根気が要ります。大変ですけど勉強になりますね。
株式会社食の天下人
らーめん 函館 武蔵
2004年に1号店をオープンし、現在は函館近郊に3店舗を展開するラーメン店。地産地消へのこだわりと多様なメニュー数で常連客も多い。2022年には地元の酒蔵から提供される酒粕を利用した「郷宝酒粕味噌らーめん」を販売。濃厚な味わいがクセになると人気も上々。
北海道亀田郡七飯町鳴川町3丁目16-3
TEL.0138-64-4840