私が選んだ職場【中華料理 李太白(リハク)】
2022年2月14日公開
資格があれば就職に有利だろうと考えた猪野さんは、一年間で調理師の免許が取得できる専門学校に入学。勉強を兼ねて働き始めたアルバイト先で調理場の迫力に圧倒されながらも多くのこと学んでいきます。
与えられた業務をマスターして、料理人として成長していく。
調理師/猪野浩孝さん
函館市出身。函館中国料理協会に所属し、青年部で行われる料理のコンクールに毎年参加する向上心の持ち主。好きなメニューは麻婆豆腐。
就職を見据え専門学校へ。
大学を中退して地元に戻った猪野さんは、就職する際に資格が役立つと考えて調理師の専門学校に通い始めました。「アルバイトの経験もほとんどなく、これといって得意なことやスキルはありませんでした。将来の進路を考えた時に、大学時代に自炊していた経験が生かせるかもしれないと思い、料理の世界を選んだんです」。
専門学校では和食コースを選択。調理実習などを続けていたある日、「李太白」でアルバイトをしてみないかと級友に声を掛けられます。授業では中華料理を学ぶ機会はほとんどなく未知の世界でしたが、厨房がどのような雰囲気なのか気になっていたことも手伝い挑戦してみることにしました。
初めて足を踏み入れる中華料理店の厨房は、想像以上の迫力だったと言います。「一瞬で火が入る料理が多く、和食や洋食の厨房に比べてスピード感があるという印象でした。コンロの火力や、一度に作る量もこれまで経験してきたものとは桁違いで圧倒されました」。初日から大きな衝撃を受けた猪野さんは卒業するまでアルバイトを続けると、そのまま同店に就職。中華の料理人としての道を歩み始めます。
混雑時は急ぎつつも焦らずに対応する。
入社後は主に麺をゆでたり、揚げ物担当となった猪野さんでしたが、その後「板」と呼ばれる野菜などを切る部門を担当。「注文に合わせて必要な食材を刻んで皿に盛り、調理を行う『鍋』の担当者に渡すのが主な役割です」。メニューごとに異なる食材と適切な量を覚えるだけでも大変で、材料を一つ入れ忘れてしまったこともあるとか。「慌ててしまう性格なので、忙しい時ほどよく考えてから動くようにしています。上司からも『焦ってミスをするくらいなら、時間がかかっても落ち着いてやったほうが結果的に早く終わるよ』と教えられました」。
また、勤務中は店内の状況を見ながら臨機応変に対応することも重要。食器が足りなくなる前に洗いものを済ませたり、ホールの人手が足りない時にはテーブルの後片付けや、完成した料理をお客様に運ぶこともあります。ホールに出る時にはバタバタした様子をお客様に見せないように注意し、音を立てずに静かに料理の皿を置くなど、丁寧な振る舞いを心掛けているそうです。
新たな持ち場を担当し、一つ上のレベルを目指す。
厨房に入って5年、持ち場を変えながら一つひとつ業務に必要なことを覚えてきた猪野さんの今後の目標は、1月から担当している鍋の業務をしっかりとマスターすること。「まずは、すべてのメニューのレシピを覚えなくてはなりません。また、ホールの様子が一番見える位置で作業しているので、状況に応じて厨房内に的確な指示を出せるようになる必要もあります」と、課題も明確。一方、入社当時は圧倒された厨房のスピード感には慣れたものの、今でもまだ十分についていけていないと自らに厳しい評価を下します。
そんな猪野さんがときどき思い出すのが、忙しすぎて右往左往していた時に料理長から言われた「持ち場を一巡してから、ようやくどう動けばいいか分かることもある」という言葉。鍋を担当したばかりなのでまだ数年はかかりそうですが、少しずつその時が近づいていると、期待に胸を膨らませます。上司からのアドバイスを実践し、料理人として成長してきた猪野さん。より高いレベルでサービスが提供できるようになることを目標に、今日も厨房で大きな鍋を力強く振ります。
営業時間の前に主な野菜を切っておく
注文に合わせて調味料を用意
湯気に注意しながら蒸し器の蓋を開ける
アルコールを使ってテーブルを除菌
洗い終わった食器類を水切り台に移動
上司に教わりながら鍋の扱い方を練習
レシピを覚えることで、業務をスピードアップ。
中華料理店はメニュー数が多いのが特徴です。当店でも定番メニューだけで60種以上あり、ランチや季節限定のメニューも加わります。猪野君は次々と入る注文に迅速に対応するため、メモを取るなど懸命にレシピを覚えていたようです。若手が担当する賄いづくりはレシピを体で覚えられる重要な機会です。同僚と切磋琢磨しながら着々と腕を磨いているので、将来が楽しみです。
料理長/佐々木祥太さん
中華料理 李太白
2003年のオープン以来、あっさりとした料理を提供するお店として人気の中華料理店。一品料理からランチ、コース料理までメニューが豊富で、毎日来店するお客様もいるほど多様な味が楽しめる。
北海道函館市宮前町30-2
TEL.0138-42-7778
http://www.chuka-rihaku.com/