学ぶ姿勢を貫いて、特殊な職場に対応する技術を磨く【村山ギソー株式会社】
2022年6月27日公開
地元に戻り、船舶に特化した家具を作る会社の求人を見つけた志村さん。これまで身につけた木工技術をベースに、船という特殊な環境で使う家具作りの技術を習得していきます。
志村 弦さん(37歳)
函館市出身。子供のころからキャンプ好きで、家庭を持った現在でも四季を問わず、家族を連れて野外生活を楽しむアウトドアズマン。料理好きでもあり、最近は串揚げにはまっている。
Uターンで知った、似て非なる家具作り。
家具職人として札幌で働いていた志村さんは、地元にUターンしたのを機に仕事探しを始めました。これまでの家具作りの経験が生かせる職場を探していたところ、新造の船に航海で必要な装備を施す「艤装(ぎそう)」を行う会社の求人を見つけます。「基本的な業務は家具作りだと知って応募しました。函館で生まれ育ったのに、船内で使用する木製家具を専門に作る会社の存在を、その時初めて知りました」。
家具作りという共通点はあったものの、船に関わる仕事は全く未知の世界。新たな世界で働くことへの期待感よりも、自分の技術が通用するのかという不安のほうが大きかったそうです。
実際に働き始めて分かったのは、これまでの経験が役立つ場面がある一方、異なる点も多いということ。中でも一番の違いは一度に作る家具の数でした。「何を作るにしても船室の数だけ用意しなくてはなりません。20部屋あればベッドだけでも20セット。これまでとは桁が違うので、さすがに圧倒されましたね」。
何度でも質問して、技術を習得する。
入社した志村さんが担当したのは、「内作(ないさく)」と呼ばれる、工場内で家具を作る業務でした。工場長から渡された図面を基に、机やベッド、海図台など、職人一人ひとりが異なる家具を必要な数だけ製作。完成した家具は現場を担当する大工によって船内に取り付けられ、志村さんはその作業にも関わります。「家具の取り付けは、町なかの店鋪などで経験がありましたが、船内で行うのは初めて。勾配の付けられた船の床に、平らな家具をどう取り付けたらいいのかなど、先輩に教わりながら覚えていきました」。
担当場所を問わず、分からないことがあれば、怒られてもいいから何度でもしつこく聞くのが志村さんのモットー。目の前の業務をこなすのが精一杯だった入所当時とは異なり、経験を重ねて技術がアップした現在は、作業を振り返る余裕も生まれたとのこと。「あの工程でこうしていれば、もう少し作業スピードを上げられたかもと、反省ばかりしています。それでも大幅な進歩ですね」。
こまめに寸法を測って、失敗を未然に防ぐ。
働き始めてから今年で13年。この業界にもすっかりと慣れた志村さんが、作業をする際に常に気を付けているのが、寸法を間違えないこと。「とにかく図面ありきの世界です。僅か5ミリメートルでも間違えると作り直さなくてはならないので、寸法が合っているか常に確認しています。材料を切る前にメジャーで測り、切った後にもう一度測って図面通りであることを確認します」。
この一連の動作を習慣付けることで、仮に誤って材料をカットしてしまっても、早い段階で修正できるので大事に至らずに済むのだとか。過去に一度、実際に失敗して苦い経験をしていることもあり、確認作業は徹底しているそうです。
そんな志村さんの目標は、これまでに作ったことのないものに挑戦すること。入社して以来、新たな作業を覚える度に、達成感を得てきた志村さん。あの充実した感覚を味わうため、まだ経験したことのない作業の習得に励む日が続きます。
FMラジオを流しながら作業
部材には使用する船室の名を記入して管理
手になじんだメジャーを使ってこまめに寸法を測
カット済みの部材を組み立てる
僅かな出っ張りもカンナで削って平に加工
作業に入る前に改めて図面を確認
常に工具を使うので、けがをしないように呼びかけています。
取締役/村上智子さん
一般的な家具屋さんとは現場の性質が大きく違うのに、志村さんは内作も現場作業も黙々とこなしてくれるエースとして成長してくれました。一方、45歳の未経験で入社して、今では第一線で働いている大工もいるので、やる気さえあれば技術が身につけられる職場であると言えるでしょう。大型の機械や刃物を扱う仕事なので、けがだけはしないようにと常に声を掛けています。
村山ギソー株式会社
高度な木工技術を生かした船舶家具製造と、新造船及び修理船の木艤装工事を大きな柱に、港町函館の造船産業を支えること58年。創業以来培ってきた技術を応用し、近年は戸建住宅建築やリフォーム等の事業を展開する。
北海道函館市入舟町1-7
TEL.0138・26・5551
http://m-giso.co.jp/