私が選んだ職場【十勝ダイニング ふる屋】

観光地で1年のアルバイトを経験しその後の一人旅で受けたカルチャーショックにより、何もしたくない状態になった安藤さん。3年前から勤め始めた居酒屋に居場所を見つけ、「お客様をもてなしたい」と楽しく働く毎日です。

大学では社会福祉士を目指すコースに在籍していましたが、観光客をもてなす仕事に興味があり、卒業後は美瑛町のコテージで働き始めた安藤さん。1年間勤めた後、好きな旅行をしようと、1カ月程一人旅を楽しみます。しかし、帰ってきてからは何もしたくなくて、自宅に引きこもるようになったといいます。「旅行先の小さな村では、会う人みんなが家族のようでとても身近に感じられました。帯広での生活とあまりに違い過ぎて、カルチャーショックを受け、現実を受け入れられずに心のバランスを崩したのかもしれません」と、当時の状況を語ってくれました。そんな安藤さんを心配したのが、かつて当店でアルバイトをしていたお姉さんでした。「働いてみない？」と誘われ、安藤さんがお店を訪れてみると、スタッフ全員が笑顔で快く迎えてくれたそうです。「その時、自分が受け入れられたと感じました。ここで働いてみようかなと思えたんです」と振り返ります。

もともと接客が好きで、より良い「おもてなし」を目指していた安藤さん。人と触れ合いながら、楽しく仕事ができるような自分の居場所を探していたのかもしれません。スタッフはチームワークが良く、忙しい時でも助け合い、常に笑顔を絶やさないため、店内には優しい雰囲気が漂っていたそうです。一緒に心地よく働ける人たちとの出会いがあり、当店で働き続けて3年が過ぎました。「お客様から『久しぶりにおいしいものを食べた』と満足そうに喜んでいただけると、やりがいを感じますね」と、今では仕事に楽しさを見いだし、ほぼ毎日出勤して接客に励んでいます。
そんな接客時に一番心掛けているのは、「食事の邪魔をしないこと」です。「せっかくおいしい料理を食べていても、スタッフのちょっとした動きで、味や気分が台無しになってしまいます。より快適にお食事をしていただくために、例えば、無愛想に見える接客や、急いで片付けたり運んだりする所作など、お客様が不愉快に思うことはしないようにしています」。また、料理やお酒を運ぶタイミング、盛り付けの美しさが映えるよう料理の向きにも気を配り、配膳しているそうです。「タイミングは、お店全体やお客様の様子を見て自分なりに判断しています。お客様に喜ばれる味を届けられること、そういう仕事に関わる一員でいられることがうれしい」と笑顔を見せます。

休日には大好きな旅行をしたいところですが、今は新型コロナウイルスの影響で、ドライブをして自然の中で過ごすことしかできません。「いずれは沖縄に行って、のんびりと海を見たいと思っています」と旅行ができる日を楽しみにしています。お店を休んだ日には「今日は安ちゃん、いないの？」と常連さんに聞かれることもあるそうで、上司の及川さんからも「看板娘」と呼ばれている安藤さん。ただ、お客様との世間話に少し苦手意識を持っていて、「今後は、話題作りがうまくできるよう、先輩たちの接客も参考にしながら勉強していきたい」と抱負を語ります。3年間働き続けてきた経験を自信に変えてますますスキルを磨き、これからも気持ち良くお客様をもてなしてくれそうです。