活性の火'24レポート
2024年9月30日公開
まちなかが今年も音楽と歓声で沸いた!苫小牧の無料音楽フェス「活性の火’24」レポート
音楽を通じて苫小牧の駅前を活性化しようと2014年に始まった音楽フェス「活性の火」。10回目となった今年は、悪天候によって初日のスタートが遅れたものの、晴天に恵まれた2日目は市内外から大勢の人が詰め掛け、過去最高の盛り上がりを見せた。苫小牧の中心街が音楽にジャックされた2日間をレポートする。
開催前インタビュー
活性の火’24 実行委員長/杉村原生さん
苫小牧市出身。立ち上げから奔走してきた、活性の火の絶対的存在。学生時代からギタリストとしてバンド活動を展開し、現在は地元経営者らと結成する「THE FLEA MARKETS」(フリーマーケッツ)で活動中。苫小牧と函館でライブハウスを経営。46歳。
今年も例年通りの開催が目標。地元企業の協賛が後押し。
今回で10回目の開催となりました
規模拡大と共に運営がボランティアだけでは立ち行かなくなり、人材確保や経費の問題は年々厳しい状況にありますが、今年は協賛企業が大幅に増え、無事に開催にこぎつけることができました。これは10回続けてきたことに対する評価と受け止め、感謝の気持ちでいっぱいです。10周年企画は特にありませんが、例年通りの活性の火を楽しんでもらうのが今回の最大の目標だと思います。
今年の見どころは?
昨年より1カ所多い計5カ所にステージを設置し、出演者は昨年の67組から84組に増えました。若草中央公園には連結型のプレハブを使った「ゼロカーボンステージ」を新設します。ついのぞきたくなる、おもちゃ箱のようなステージになればいいですね。
また、地元企業の協力で20歳以下限定「YOUNG EVERFIRE」を初めて行いました。通常のオーディションではどうしてもベテラン勢に軍配が上がってしまうので、原石を発掘し、応援する企画です。見事合格した4組が出演するので、注目してください。
開催に向けた意気込みをお願いします
市外や本州を拠点に活動するアーティストによるレベルの高いパフォーマンスをここ苫小牧で、無料で観覧できるところが最大の売りです。昨年はあとひと息のところで悪天候のため中止となりました。今年こそお客さんの安全を第一に対策をとりながら完走できるよう、みんなで心を一つにして最後まで楽しみましょう!
もう“何もないまち”とは呼ばせない!演者と聴衆が心を一つにした2日間
【当日レポート】1日目 8月31日(土)
スケジュール繰り下げも、定刻のステージは熱狂
明け方の豪雨で予定の設営ができず、SNSで開始時刻の延期が伝えられる。残念ながらオープニングセレモニーは中止。10回やっていても全く同じという年はなく、必ず何かしらのアクシデントがあるものだ。
メイン会場と屋外のアカシアステージのスタート時刻は午後1時に繰り下げとなったが、駅前のライブハウス・エルキューブはほぼ定刻の午前10時過ぎにスタート。メイン会場から流れて来る人も多く、エルキューブは熱狂の波に揺れる。とてもまだ午前中とは思えない。
他イベントと交わる参加者、ドネーショングッズも
この日は昨年と同じく「まちフェス」と題して駅前ゾーンで複数のイベントが開かれている。エルキューブを出て若草中央公園へ向かう途中、畳んだ傘を持ったたくさんの人たちとすれ違う。無料の循環バスが走っているので、他のイベントの来場者がバスに乗って活性の火を見に来ることもできる。そのせいだろうか、フラッと立ち寄ったふうの中高年女性のグループが物珍しそうに見ているのも活性の火ならではの風景だ。
入場無料だが、今年はロゴ入りのドネーションラバーバンドが1000円で販売されている。さっそく購入し、手首に装着すると「自分も活性に参加しているのだ」という実感がわき、同じものを着けている多くの人たちと“同志”の感じがしてうれしい。
最後まで大興奮のゼロカーボンステージ
14時ころには雲間から時折青空がのぞき、蒸し暑くなってきた。スタートが繰り下げになったことでスケジュールは少々過密だが、その分内容は濃い。メイン会場には、プレハブをつなげた簡易ライブハウス・ゼロカーボンステージが今回初めて設置された。のぞいてみると実際かなり狭いのだが、バンドとお客さんの距離が近く、まさに熱狂のライブ感だ。メインステージの演奏が終了すると、お客さんはまだ演奏が続くゼロカーボンステージに合流。中で汗だくになって踊る人も、入りきらなかったお客さんも、みんな笑顔で本当に楽しそう。独特の熱量の高さに、活性の火は唯一無二のフェスなのだと再確認した日だった。
【当日レポート】2日目 9月1日(日)
快晴のフェス日和、市内外から来場者が続々
快晴の朝を迎えた2日目。駐車場には札幌、函館、旭川、帯広、北見…全道各地のナンバーの車が続々とやってきて、警備の人たちは交通整理に忙しい。駐車場とメイン会場が隣接していて、車での来場にとても便利なのも活性の火の良いところだ。昨年設定されたスタンディングエリアに面したプレミアムカーサイトは今年も完売。ワクワクを隠さず、続々と会場に流れていく人の波に記者の気持ちも高まる。
トップを切るのは次代を担う原石を発掘する「YOUNG EVERFIRE」。20歳以下のミュージシャンが対象のオーディションに合格した4組がエネルギッシュな演奏を披露する。活性の火をきっかけに、苫小牧から全国区になったミュージシャンもいる。彼らもそうなってくれたら最高だ。
各会場とも夏祭りの盛況ぶり
メイン会場は昨日の午後もなかなかのにぎわいだったが、今日は本当に混雑している。露店やキッチンカーは朝から行列。ビールを飲みながら聴いている人、冷たい物を買ってもらう子ども、テーブルいっぱいにつまみを買い込んで乾杯するグループなど、さながら夏祭りだ。一方の駅前ゾーンも熱い。すし詰めで大盛況のエルキューブと、ステージが緑に包まれたアカシア公園を交互に楽しむ。駅前では今日も他のまちなかイベントが開かれていて、通りがかりに足を止めて聴き入る人もいる。これを機に、活性の火を知ってもらえたらいいなと思う。
地元愛に火をつける数々の名MC
午後になると活性の火に毎年出演している常連アーティストのステージが目白押し。熱狂的なファンたちが前列に陣取り、会場を盛り上げる。活性の火で見てファンになった人もいるだろう。実は記者もあるバンドのファンになった一人。これもフェスの醍醐味だ。
音楽だけでなく、MCも聞きどころ。一つひとつのバンドが何を語ったのかはここに書き切れないが、地元出身バンドのMCは特に心に染みる。若者に「何もない」「つまらない」と言われ続けてきた苫小牧にも、こんなに素晴らしいフェスができた。「活性の火をともし続けなければ」。苫小牧で生まれ育った記者も同感だ。最後にステージに立った杉村さんは支えてくれた人たちに感謝を述べると共に「苫小牧を日本一の遊び場にしていきたい」と締めくくり、会場からは温かい拍手と声援。ただ楽しかっただけではなく、みんなの心に何かしらの思いを残して、活性の火'24は幕を下ろした。
聴衆インタビュー「活性の火に一言どうぞ」(在住地/参戦歴)
りほさん:左(苫小牧市/3回)
地元・苫小牧で音楽が楽しめるのはエルキューブと活性のお陰なので、感謝の気持ちを込めてボランティアで準備にもかかわっています。苫小牧ならではのフェス、これからも続けてほしいと思います。
柳田さん:右(東京都/3、4回)
毎回、活性に合わせて登別に帰省しています。他のフェスよりも熱量が高いところが活性の良いところ。末永く続いてほしいです。ももさん(苫小牧市/初参戦)
初めて来ました。知らないバンドばかりで楽しめるかちょっと心配でしたが、全然そんなことなくとても楽しくて、また来たいです。運営は大変だと思うけれど、頑張って続けてほしいです。やなさん、りささん夫妻(岩見沢市/5、6回)
よく夫婦でロックフェスに行くんだけど、苫小牧にこの規模のフェスを持って来ているのはすごいと思う。今年はドネーションリストバンドがあって、協力しやすいね。ぜひ続けてほしい。高田さんご一家(富良野市/4、5回)
子どもが小さいので、今年はプレミアムカーサイトを予約しました。家族で2日間、ピクニック気分で楽しみます。朝の雨で水浸しかと思ったけれど、意外と乾いていて助かりました。これからも楽しみにしているので、他のイベントに負けずに頑張ってほしいです。もっちさん:左(札幌市/5、6回)
これだけのフェスが無料なのがすごいし、無料だと友達を誘いやすいですね。まちを巻き込んでのフェスは大変だと思うので、これからもたくさんの企業に協賛してほしいです。
あっちさん:中(京都府/5、6回)
数ある野外フェスの中でも、こんなに地元に寄り添っているフェスは他にないと思います。地元のおじいさんがノッているのを見るのが好きです。
とっちさん:右(苫小牧市/2回)
苫小牧にわざわざ来る機会はあまりないと思うので、活性の時に市外から友達が来て、一緒にフェスを楽しめるのはうれしいです。
【事後インタビュー】活性の火’24を振り返って
10回目の開催をどう評価しますか?
来場者数は昨年より大幅増の2万4千人。好天となった日曜日は、飲食店は軒並み売り切れ、駐車場もほぼ満車で、過去最大の人出につながりました。入場無料でDIY色の強いフェスという点で、商業フェスとは違う温かみがあるとSNSでも評価いただいていて、今回の来場者数は10年間積み上げた信頼と実績によるものと思います。
10年を振り返って思うことは?
苫小牧には僕らの趣旨に賛同し、支援してくれる人たちがたくさんいて、こういうフェスを開催できる素晴らしい環境があることを、10年目にして市民の皆さんに示すことができました。特に、地元を誇りに思えるフェスとして、若い演者たちに確実に影響を与えていることを実感し、今後も役割を果たしていかなければいけないという責任を感じています。
今後の抱負をお願いします
現会場は駅前からは少し離れているので、駅前通りの延長線上に2026年に完成する市民ホールの活用も視野に、将来的には駅前に根付いたイベントにしたいと思っています。この10年間、我々大人よりも多感で貴重な時期を生きる若い人たちが、同じ思いを持つ同志として成長してくれました。これからも畑を耕し、種をまいて芽を育てるように、仲間を増やして多くの人を巻き込んでいくスタイルが活性の火にふさわしい形かもしれません。来年も皆さんが待ち望んでいる活性の火を開催できるよう、検討していきます。